「落語の土鈴」も 1番目~3番目4番目~6番目7番目~11番目12番目~15番目16番目~20番目21番目~26番目27番目~28番目と番外の2つと紹介してきました。今月はその続きで29番目~32番目の4種類を紹介します。

今月も宜しくお付き合いをお願い致します。

落語土鈴 いたりきたり

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海老天たまこ作

枝雀落語の「いたりきたり」を題材にした土鈴です。

登場人物は二人、家で飼っている動物が話題となります。イタチに似た「いたりきたり」と「でたりはいたり」。 なまこに似た「のらりくらり」、「ねたりおきたり」。 不思議な世界観の中で二人の会話が進んでいきます。

聴き手の方も、話を聴いているうちに何か飼いたくなりました。 都合のいいことに、飼い手の方でも手放したい生き物がありました。 その生き物は「ねごたりかのたり(願ったり叶ったり)」。 オチのところで名前が出てくるだけで何に似ているとか、どんな生き物とか、全く説明がありません。

余韻を残して突然オチたことで、返ってストーリーのふくらみを感じます。

その不思議な世界観の表現、土鈴でチャレンジしてみました。噺のストーリーとの関連はご自由にイメージして下さい。

落語土鈴 狸賽

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海老天たまこ作

上方落語の「狸賽」を題材にした土鈴です。

子狸の恩返しのお噺。あるバクチ打ちの男に助けられた子狸、何にでも化けられるというので、サイコロに化けさせて男はチョボイチの賭博場へ。

強引に親になって、出したい目を言うと子狸が化けたサイコロはそのとおりの目を出して勝ち続け。

親が言った通りの目が出るので、周囲の男たちが疑いだして数字を言うなと釘を刺す。

それでも大丈夫、2の目を出したければ「上を向いて両目を開ける」、1の目を出したければ「逆立ちして尻の穴」と相変わらず調子が良い。

そこで最後の一勝負。狙い目は5。しまった5の目の出し方は聞いていなかった。そこで、「うーん、梅鉢の形だ。えー、まーるくなって、一つ真ん中にあって。そう、梅鉢は天神さま。なッ。天神さまだよ、頼むぜッ」。 男が壺ザルを開けると狸が冠かぶって、笏(しゃく)持って澄ましていた。

落語土鈴 動物園

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海老天たまこ作

上方落語の「動物園」を題材にした土鈴です。

ゆっくり出勤して、力仕事でもしゃべる必要もなく、昼食・昼寝付きで高給。こんな好条件な求人情報に飛びついて行ってみると仕事場は移動動物園。 目玉展示の虎が死んだので、虎の皮をかぶって虎になりすますというお仕事。

空腹だった男は、子供客の持っているパンほしさに「パンくれ」と言ってしまって不審がられたりしながらもなんとか虎の役割を果たしていた。

そこに突然、動物園のアナウンスが「虎とライオンの猛獣ショー」の開催を告げた。男が慌てふためいているのにも構わず、虎の檻の中にライオンが放たれて、男はパニックに。

さすがに百獣の王ライオンはうなり声を上げながらノッシノッシと虎に近づいてきて、虎の耳元で「心配するな、わしもライオンの代わりに雇われたんや」。

落語土鈴 天狗裁き

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海老天たまこ作

上方落語の「天狗裁き」を題材にした土鈴です。

家で寝ていた八五郎が妻に揺り起こされる。「お前さん、どんな夢を見ていたんだい?」八五郎は何も思い出せないので「夢は見ていなかった」と答えるが、妻は納得せず、隠し事をしているのだと疑う。 「夢は見ていない」「見たけど言いたくないんだろう」と押し問答になり、夫婦喧嘩になってしまう。

その後、長屋の隣人、大家、奉行、が順々に仲裁に入り、やはり夫々が夢の話を聞きたがって話はだんだん大きくなり、ついに縛り上げられて奉行所の庭木に吊るされてしまう。

そこに大天狗が現れ、奉行所から助け出してくれたものの、やはり夢の話を断ると大天狗は怒り出し、八五郎の喉元につかみかかる。首筋に大天狗の長い爪が食い込み、八五郎は苦しみ悶える。

気が付くと八五郎は家で寝ていて、妻に揺り起こされていた。うなされていたようだ。「お前さん、どんな夢を見ていたんだい?」


本日はここまで、お後がよろしいようで。
落語土鈴は現在32種類(鷺取り、池田の猪買い、蛸芝居、鬼の面、高津の富、猫の災難、首提灯、牛ほめ、蛇含草、死神、 猫の災難、猫の忠信、天神山、あたま山、看板のピン、馬の田楽、時うどん、蔵丁稚、寿限無、饅頭怖い、鼻ねじ、犬の目、 七度狐、始末の極意、不動坊、目薬、住吉駕籠、猿後家、いたりきたり、狸賽、動物園、天狗裁き)です。お気に入りの演目は有りましたでしょうか? これからも種類を増やしていきます。「こんなのが欲しい。」、「この演目が好き!」、その他ご意見ご感想等がありましたらメールまたは掲示板への書き込みにてご連絡下さい。

落語土鈴シリーズはまだまだ続く予定です。また、新作ができましたらご案内します。


噺のついで

「いたりきたり」で触れた桂枝雀について。『浪速の爆笑王』とも言われた2代目桂枝雀です。

1939年(昭和14年)8月 13日 - 1999年(平成11年)4月19日。

「笑いは緊張と緩和で決まる」という理論を実践したのです。よく間違って「緊張の緩和」と説明しているのが見られます。 落語で笑ってストレスを解消しようというだけなら「緊張の緩和」でも良いのでしょうけれど、緊張⇒緩和⇒緊張⇒緩和⇒という波が次々と笑いを生み出していくのです。

枝雀師匠の作り出す緊張は張り詰めたというような緊迫感ではなく、例えば「代書」に出てくる客のように自分としては極めて真面目に取り組んでいる状態です。 「こまり」とも表現されています。 それがずれて「違うがなァ」となれば笑いが生じます。

緩和の所で笑いが生じるのですが、枝雀師匠のように緊張をうまく作ることによって笑いが大きくなるのです。枝雀落語は最高で永遠です。

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