鈴懸馬
6月の行事として有名なものの一つに「チャグチャグ馬コ」があります。
遠く奈良時代から馬産地として有名な岩手県で「蒼前様」を信仰とするお祭です 100頭ほどの馬が、滝沢市の蒼前神社から盛岡市の八幡宮まで14キロの道のりを行進するお祭です。 馬のあでやかな飾り付けとたくさんの鈴が特徴で、歩くたびにチャグチャグと鳴る鈴の音が名称の由来といわれています。
馬につけられた鈴の音が平成8年、環境省の「残したい”日本の音風景100選”」に選定されました。
このページでは「チャグチャグ馬コ」に限らず、鈴で飾られた馬を取り上げてみたいと思います。。
土鈴のページですが、土鈴ではなくて画像は本物の埴輪です。
奈良県天理市の天理参考館に行ってみた時に、そこで目を引いたのは高さ約73cm、結構大きな馬の埴輪でした。
5世紀終り頃の小円墳から出土した馬形埴輪です。かなりの部分を欠いていますが全体の分かる希少な例です。 細部まで比較的丁寧に表現されていて、鞍部には革製の鞍褥(くらじき)を置いていた様子がわかります。 この鞍の両側には粘土板で縁取りされた四角い板が吊るされていますが、これは障泥(あおり)とよばれる泥除けで、その上には鞍から垂らされた円形の鐙(あぶみ)が表されています。 一般に馬形埴輪は実用の馬よりも、儀式などのために飾りたてられた馬の姿を表したものが多く出土しています。儀式で神様のところに行く盛装なのでしょうね。
本例も胸繋(むながい)に馬鈴が付けられ、尻繋(しりがい)からは五鈴杏葉(ごれいぎょうよう)が両側と尻側に垂らされていて、飾馬の姿を写したものであることがわかります。 口元には銜(はみ)がはずれないように固定するための環状の鏡板(かがみいた)が表現されていますが、これも鈴で飾られています。
奈良県天理市 ツルクビ1号墳出土 古墳時代 5世紀
鈴杏葉(すずぎょうよう)と馬鈴
古墳時代に実際に馬を飾った鈴も古墳副葬品として出土しています。
画像の鈴杏葉は鈴が3つですが、5つの物もありました。
群馬県 天宮古墳 古墳時代後期
ヘッダー右側の小川二楽作の馬土鈴画像では胸に馬鈴、腰に鈴杏葉が付けられています。
いよいよ本題の土鈴です。
土鈴の埴輪馬の中にも鈴が付いた飾馬のデザインの物がありますね。
どれも似ていますが同じ型、同じ作者なのでしょうか?
古墳時代から一気に跳んで、現在にも続いている飾り馬。
いよいよ「チャグチャク馬コ」の土鈴です。
環境省の「残したい日本の音風景100選」 岩手県 滝沢村 チャグチャグ馬コの鈴の音が選ばれています。
もう一つの伝統行事、シャンシャン馬にも鈴で飾られた馬が登場します。
蛇足です。馬と鈴についての雑学です。
雑俳・たからの市(1705)「馬の鈴・しゃんこしゃんこと振鳴らす」
夏目漱石の句 「懐かしむ衾に聞くや馬のすず」
島倉千代子が唄った「りんどう峠」にも馬の鈴
「りんりん、りんどうは小雨に濡れる。わたしゃ別れの涙で濡れる。 りんりん鳴るのは馬の鈴、姉さは峠に消えていく、消えていく」
ヘッダー、フッターにも埴輪馬の土鈴を挙げてみました。 ヘッダー左側、誉田八幡宮授与鈴、ヘッダー右側、小川二楽作、 フッター左側、村上荘山作、フッター右側、湊焼。