栞バックナンバー 第3号③
奈良新薬師寺山門の隣、鏡神社入り口の飾り窓に楽面と埴輪が並んでいる。以前から参拝の度に作者をお尋ねしてみたいと思っていたが住居が判明しなかった。季刊誌土鈴で作者が石津玉仙さんであり、附近に住まわれ、 土鈴も創作されていることを知り、この度新薬師寺参拝を済ませたので御自宅を訪問した。
新薬師寺の山門を出て右へ道をとったが判らない。途中畑で柿取りをされていた老人にお尋ねしたら「この道を行き、左に曲がった処の家で、 入り口に埴輪が立っている家ですよ」と教わった。
玉仙さんは不在であったが心よく迎えて下さった。玄関を入ると右側の壁面に掛かった何十種類もの古楽面と応接室の奥の佛像と古楽面が数多く並んでいる。 しばし、その美しい面に見入ってしまった。どれらに交じって色美しく型も変わった土鈴が見えたので拝見を乞うと、「どうぞ上がって見て下さい。」とのことで 座敷に上がり手に取って見せていただいた。数種類の土鈴があり、床、茶箪笥の棚に並べられていた。手作りのためその姿の美しさ、土の温かさが鈴に込められているように感じた。
持参していた鈴の写真をお見せしたところ女主人のお姉さんが作陶中にもかかわらず店に出てこられ製作について種々なお話をお伺いすることが出来、その際、土鈴も置物工芸品としてみて欲しい。 又、そのようなものを作りたいと言われたのが印象的である。
この土鈴は大きくて重い、種類も少ない、従って価格も普通の土鈴より高い。
美しい型と、ひなびた色の高山寺鳥獣戯画絵巻図を彫り込んだ土鈴があった。本年の卯年にちなみ、兎図と蛙の相撲の図柄土鈴二個を購入し、石津玉仙さん宅を出て帰途についた。
(注)
面も土鈴も他には出されていない。注文を受けてから造られるので在庫も少ない。注文は直接訪れてお願いすること。
奈良市高畑本薬師町610-1 石津玉仙