鈴散歩 栞第1号 その2

頒布土鈴

進藤勝哉氏 奈良土鈴、その他

入佐憲正氏 三木土鈴、その他

平柳冨美子氏 古土鈴、その他

川西誠治氏 阿部野神社その他

 

シンボル土鈴

お土産土鈴

今回は博多土鈴を配布する予定が、前回を以って一周年を迎えて記念土鈴、文字入(友の会、昭和年月、市章を陽刻)の6×6をお頒かちした。

シンボルマーク

 丸型の大きさ7cmの土鈴に肩に市章、その下に友の会と陽刻した陶鈴、ご賛同があれば製作する予定です。

 

神戸の土鈴 (入佐憲正)

1. 神戸の土人形

「日本の土人形産地分布図」(奥村寛純氏(※)作成)には廃絶、作成中止を含めて全国135か所の地名が挙げられているが、 兵庫県では稲畑、葛畑、早瀬(廃絶)の3か所の名が見えるだけである。昭和15年ごろの先学の記録に長田の明泉寺(通称大日寺)の臥せ牛は「以前は夢野の瓦師が作っていたが最近は伏見辺りの移入品ばかりとなった」とあるが、柳原天神社の天神像も明石産ではないかと言われており、須磨区妙法寺の土虎も先代住職の手作りであった。

(※)奥村寛純:伏偶舎郷土玩具資料館(大阪府島本町)館長

 

 

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2. 社寺の土鈴

(1)湊川神社(神戸市中央区)

 a. 鎮宅霊符神鈴

 大楠公作と伝えられる神鈴を形どったもので上部に亀と蛇(北方守護)の玄武が乗せられており、正面に菊の紋、背面に神社名のある越前焼。昭和15年同社600年記念として授与されたものは正面に(鎮宅霊符神)(註)背面に(建武元年8月 日)の刻印があり、「天地四寸音色良く青銅色」であったと言われている。(註)鎮宅霊符神は中国では古くから信仰された北辰(北極星すなわちこぐま座α星の中国名)、北斗を中心とした星々を神格化した道教の神で、後に神仏を習合し(天御中主命・あまのみなかぬしのみこと 妙見菩薩)家屋敷の安泰除災の神として信仰されている。

 b. 狛犬鈴

 阿吽二つを並べて一つの土鈴にしたもので彫刻家・平櫛田中作。H8cm

 c. 丸小鈴

 上部に神紋と神社名、音色良し。H3.6cm

 

(2)生田神社 (神戸市中央区)

 a. えびらの梅鈴

 寿永3年、生田森における源平合戦の折、箙(えびら)に梅花一枝をさして奮戦した梶原源太景季に因むもので、白地の梅花形に兜のレリーフ、音はよろしくない。 H6.4cm

 b. 長寿鈴

 宝物の鉄鈴を模したもので戦前のものは「錆鉄色で古雅は明石焼」だったと言われている。現在のものは少し明るい色になっている。 H8.3cm

 c.以久多幸福鈴

 一対の丸型雛土鈴。平安神宮の桜橘縁起鈴と同巧。 H6.0cm

 d.縁結び鈴

 立ち雛型。流し込みの新しいもの。手向山八幡宮の奈良一刀彫型と異なり、富山土人形のものに似たやさしい顔をしている。 H9.2cm

 

(3)長田神社 (神戸市長田区)

 a. 福寿鈴

 丸型で上部に菊の紋と福寿の字、底部に神社名。湊川神社の丸小鈴に相似。 H5.5cm

 

(4) 有馬の温泉神社

 祭神・大巳貴命に因み神戸電鉄七福神のうち、大黒天として親しまれており大判の大黒天の紙絵馬も授与されている。土鈴では二福神や大黒天像があるが、いずれも移入品と思われる。

 

(5)干支土鈴

 年頭に各社寺で授与される干支土鈴は年々多種のものが出没するが、そのほとんどは移入品と思われる。せめて当の社寺特有のものでなくても、せめて刻印でもあればと思うが大半は無印かゴム印の社寺名くらいのものである。小絵馬と同様社寺の授与品はあるいは護符であり、あるいは参拝記念品である以上、その産地や作者をとにかく言うべき筋合いのものではないが、出来得れば「佳品」の授与が望まれる。昭和55年に敏馬神社(みぬめじんじゃ、神戸市灘区)で授与された三猿の土鈴は三猿を背中合わせにした形でなかなか味のある佳品である。そのほかでは生田神社のものが優れているように思われる。

 

 

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3. その他の土鈴

(1)箱木千年家の土鈴 (神戸市北区山田町)

  神戸市北区山田町衝原にある重文箱木家住宅をかたどったもので西区神出町広谷に舞子焼の末汎窯を構える南汎(ばん)氏の作。無彩色の簡素な佳品である。舞子焼は寛政年間に衣笠宗兵衛が舞子の地で創始したが、大正末期に廃絶していたものを南氏が復活した。

 

(2)最明寺の趣味家の土鈴

 西区神出町の最明寺には故宮本圓心(本名:寺口督次)氏の収集にかかる二千数百点の趣味家の土鈴が保管されている。宮本氏は昭和5年5月に同好者33名と雅楽多宗を結成し、全国の同好会と盛んに交流して収集に励んでいたが、戦後は雅楽多宗も自然に消滅し、宮本氏も昭和42年に86歳で死去した。その後、夫人の寺口いと氏が散逸を心配して当時の住職・山本智啓氏に寄贈されたものであるが、現在の保管状態は必ずしも万全とはいい難く、このままでは破損紛失の恐れがあり、早急に調査を行うとともに完全な保管方策を講じる要が認められる。
 なお、神戸電鉄で例年発行する神戸三社初詣記念乗車券の図案は当寺保管の土鈴が数種づつ使用されている。

 

(3)神有七福神の宝船鈴

 既述の「全国舟船玩具一覧」にその名が掲げられている。神有電車(現神戸電鉄)沿線七福神巡拝は昭和4年から行われているが、当時は東京の七福神巡りを模して各指定社寺授与の福神像を素焼きの船に乗せて神棚に祀ったもので井上重義氏の「兵庫の郷土玩具」にその写真が掲載されている。しかしこの宝船が土鈴化されたことについては未見、未聞である。

 

(4)有馬温泉の土産物土鈴

 「日本の土鈴」(森瀬・斎藤共著)には有馬角の坊の将棋の駒型の土鈴の写真が揚げられているが、このようなものは正直旅の記念品として通用するものであるが、現在土産物屋の店頭で見かけるものにはこれといったものは見当たらない。無国籍のものの他は亰陶と思われるものが多く秋芳町のものも見られる。これらも観光土産である以上、社寺の授与品と同じで、その産地や作者等は関係のないことである。しかし、せめて有馬の名、須磨、舞子の名にふさわしい佳作は作られないものだろうかと思われる。

 

(5) 初詣記念鈴

 正月には例年阪急、山陽、神戸の私鉄で神戸市内の三社(湊川、生田、長田)初詣記念乗車券を発売しており、各社で夫々記念品が授与されているが、当社では小型の土鈴が授与されていた。大量生産の安直なものではあるが年に一度の、その年限りのものとしてはちょっとした記念ではある。因みに昭和56年の酉年には鶏のレリーフ、昭和59年の子年には「ね」の字の図案化でいずれも絵馬型。

 

(6) 海神社(かいじんじゃ・わたつみじんじゃ)神戸市垂水区

 満珠干珠(みつたまひるたま)鈴 当社からは土製で紅白の一組となった満珠干珠鈴が授与されているが、土鈴となっているのは満珠の方が普通の鈴型、干珠の方はベル型でいずれも白色H7.7cm 因みに満珠干珠土鈴では長門二ノ宮・忌宮神社(山口県下関市長府)のものが有名であるが、玉津島神社(和歌山市和歌浦)にも九度山土鈴の故松岡英之助作の同巧のものがあった。尚、縁起については海神社は古事記の海彦山彦の物語に由来するとし、忌宮神社は神功皇后の名を挙げているがこれはそれぞれの祭神に因るからであろう。

 

(7)本住吉神社 (神戸市東灘区)

 住ノ江の鈴
 麦藁細工の住吉踊りを土鈴化したもの。
 神出の最明寺に保管されている趣味家の土鈴の中に同型のものが見られるので、以前に作られたものが最近復活されたものか。 H7.9cm

 

(8) 多井畑厄除八幡宮 (神戸市須磨区多井畑)

 絵馬型土鈴
 図柄は神饌餅掲神事、みあかし奉納神事、社殿の三種。最近同種のもので図柄だけ変えたものが各社で見られるようになった。高砂神社の宝船、大阪難波八坂神社の獅子頭舞台等。

 

(9) 船寺神社 (神戸市灘区)

 全国舟船玩具一覧(1966年 中山香橘、浅見素石共編)に当社のものとして宝船鈴、灘丸宝船鈴の2種が掲げられており、また大阪ドレー会の「土の鈴」にも「厄除鈴」の名が見えるがいずれも廃絶してみることが出来ない。

 

(10) 筒井八幡神社 (神戸市中央区)

 先学の記録に「宝物の古鈴があるを模して土鈴とした、高さ2寸、青銅色、また雅味あふれ筒井八幡の文字浮き出しあり、音色もよし、明石焼」とある。廃絶。

 

(11) その他の社寺

 前記の「土の鈴」には他に三宮神社の商業繁栄鈴、小野八幡の厄除け鈴、七宮神社の宝打出小槌鈴、摩耶山天上寺の練錬太鼓鈴、明泉寺の牛の鈴、妙法寺の虎の鈴等の名がみえるが、これらもすべて廃絶している。このうち少なくとも明泉寺のものは作られた形跡がなく、妙法寺の虎土鈴も他に製作されたという記録が見当たらない。

 

 

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