今月は先月に引き続いて「第1回マスマス土鈴を楽しみますの会」の土鈴をご紹介します。


天女の羽衣

天女の羽衣

三保の村に漁師が住んでおりました。ある日のこと、漁師が浜に出かけ、浦の景色を眺めておりました。 ふと見れば、一本の松の枝に見たこともない美しい衣がかかっています。天女が体を清めるために衣を松に掛けていたのです。

しかし、あたりに人影はありません。誰かの忘れ物だろうと、漁師が衣を持ち帰ろうとしたそのとき、どこからともなく天女があらわれてこう言いました。 『それは天人の羽衣。どうそお返しください』ところが、それを聞いて漁師はますます大喜び。『これは国の宝にしよう』とますます返す気配を見せません。 すると天女は『それがないと私は天に帰ることができないのです』とそう言ってしおしおと泣き始めます。

さすがに漁師も天女を哀れに思い、こう言いました。『では、天上の舞いを見せてくださるのならば、この衣はお返ししましょう』天女は喜んで三保の浦の春景色の中、霓裳羽衣(げいしょううい)の曲を奏し、返してもらった羽衣を身にまとって、月世界の舞いを披露しました。 そして、ひとしきりの舞いのあと、天女は空高く、やがて天にのぼっていったといいます。

なお、このときの羽衣の切れ端といわれるものが、近くの御穂神社(みほじんじゃ)に保存されています。

富士山笑呼 作

一休さん 「このはし、わたるべからず」

一休さん


昔々のその昔、一休さんというとても機知に富んだ小坊主さんがいました。

ある日一休さんは町の人に連れられてある店の前にやってきました。 「このはし、わたるべからず」 看板にはこう書かれていました。 町の人は橋を渡れずに買い物ができないのです。

一休さんは少し考えた後、橋のど真ん中を歩いて橋を渡りました。 町の人は一休さんに言いました。 「今、橋を渡ったじゃないか」 「いいえ。私は看板の言う通り、端を歩かず真ん中を歩いて渡ったのです」

おなじみの一休さんのトンチ話です。枡を川に見立てて、その上に土鈴の橋を組み立てるとお話のシーンが出来上がります。

吉備コマ 作

三枚のお札

三枚のお札

ある山寺のやんちゃな小僧さんが和尚さんにお願いして山へ栗拾いに行かせてもらうことになりました。

山には子供を食べてしまう恐ろしい山姥が住んでいるので、和尚さんはお守りに三枚のお札を小僧さんに渡しました。

小僧さんは山で栗拾いに夢中になって、すっかり目が暮れてしまいました。小僧さんは急いで帰ろうとしましたが暗くて道に迷ってしまいます。 すると向こうに灯りのついている家を見つけ、その家の親切なお婆さんに一晩泊めてもらうことになりました。

小僧さんが夜中にふと目を覚ますと、部屋の向こうでぎっしぎっしと音がします。音のする部屋を覗くと、口が耳まで引き裂けた恐い山姥が包丁を研いでいるのです。 お婆さんが山姥だったと気づいた小僧さんは逃げ出そうとしましたが、すぐに山姥につかまってしまいます。

小僧さんが逃げるために「便所に行きたい」と嘘をつくと、山姥は逃げられないように縄をつけて行かせました。 小僧さんは縄を外すと柱に縄をくくりつけ、お札を壁に貼って自分の身代わりに返事をするように言って、便所の窓から逃げ出しました。

それに気づいて追いかける山姥に、小僧さんは二枚目のお札を大きな山に変えて山姥の行く手を阻んでびゅんびゅん走って逃げましたが、またすぐに追いつかれてしまいます。

小僧さんは今度は三枚目のお札に大きな川になるように命じます。 山姥が必死で泳いでいる間に、小僧さんはなんとか和尚さんのいる山寺に到着しましたが、山姥はすぐ近くまで追ってきていました。

和尚さんは小僧さんをつづらの中に隠し、「小僧を出せ」と怒っている山姥に「化け比べをして自分に勝てば小僧を渡してやろう」と申し出ました。

快諾する山姥に、和尚さんはにんまり笑って「小さな小さな豆に化けてみろ」と言うと、山姥はくるっと体を縮めて小さな豆に化けました。 その途端和尚さんは豆をつまんでぱくり!山姥は食べられてしまいました。

加藤正宏 作

浦島太郎

浦島太郎

むかしむかし、浦島太郎という漁師がいました。

浦島太郎が釣りに出かけると、浜辺で子どもたちが亀をいじめているのを見つけたので、浦島太郎は亀を助け海へ逃がしてやりました。 すると亀が「助けていただいたお礼に竜宮城へ案内します。わたしの背中に乗ってください」と浦島太郎に言いました。

竜宮城では、美しい乙姫さまに歓迎され、魚たちの踊りやおいしいごちそうでもてなされ、毎日とても楽しく過ごしていました。 楽しい日々が続き、浦島太郎はそろそろ地上に帰ることにしました。 そのことを乙姫さまに伝えると、乙姫さまは「この箱は決して開けてはなりません」と言い、浦島太郎に玉手箱を渡しました。

玉手箱を手にした浦島太郎が亀に連れられ浜辺に戻ると、あたりの様子がすっかり変わっていて、知ってる人が一人もいなくなっていました。 浦島太郎は竜宮城のことを思い出し、乙姫さまが決して開けてはいけないと言った玉手箱を開けてしまいました。 すると、箱の中から白い煙がもくもくと出て、たちまち浦島太郎は白いひげを生やしたおじいさんになってしまいました。

竜宮城、タコ、 亀に乗った浦島さんと魚篭(びく)、乙姫様と玉手箱、鯛と酒トックリは夫々別の土鈴です。

海老天たまこ 作


先月と今月で4つづつ、合計8組の土鈴をご紹介しました。 各々、日本のおはなしという共通のテーマに沿って作られたものです。

今年は第2回目の「マスマス土鈴を楽しみますの会」の土鈴が完成しましたので、 とても楽しいセットですのでまた別の機会にご紹介したいと思います。

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