9月には「読書の秋」をテーマに土鈴をご紹介しました。
そこで予告をしましたが今月の土鈴は「万葉歌」の書かれた花土鈴です。
朝顔(キキョウ) |
山吹(やまぶき) |
山吹 |
山吹 |
言に出(い)でて 言はばゆゆしみ 朝顔の 秀(ほ)には咲き出ぬ 恋もするかも 作者:不詳 万葉集第10巻 今日いうアサガオは、奈良時代にはまだ渡来していない。だからこの朝顔はキキョウなのです。深い藍色をたたえた品格の高いキキョウを、万葉人は愛したのでしょう。 |
山吹の 立ちよそひたる 山清水 汲みに行かめど 道の知らなく 作者: 高市皇子(たけちのみこ) 万葉集第2巻 天武天皇の皇女の十市皇女(とをちのひめみこ)が亡くなったのを悲しんだ歌です。山吹の黄色と山清水で、十市皇女のいる黄泉(よみ)をイメージしているようです。 |
山吹の繁み飛び潜くうぐひすの 声を聞くらむ君は羨しも 作者: 大伴家持 万葉集第17巻 |
山吹(やまぶき)は、日に日に咲きぬ、うるはしと、我(あ)が思(も)ふ君は、しくしく思(おも)ほゆ 作者: 大伴池主 万葉集第17巻 |
鴨頭草(つきくさ=つゆくさ) |
椿 |
菊 |
次嶺(つぎね)=フタリシズカ |
朝(あした)咲き夕べは消(け)ぬる鴨頭草の消ぬべき恋も吾はするかも 作者: 不詳 万葉集 鴨頭草は露草、月草、ツユクサとも書かれます。。 |
巨勢山(こせやま)の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野を 作者:坂門人足 万葉集第1巻 奈良県御所市古瀬で詠まれた一首です。椿も聖なる霊力の宿る聖樹で、「つらつら椿」「つらつら椿」と繰りりかえし呼びかけることで、椿の霊力を大いに受けることができるのでしょう。 |
もゝしきにうつろひわたる菊の花にほひぞまさる萬代の秋 |
(前歌:長歌) つぎねふ 山城道を 他夫の 馬より行くに 己夫し 歩より行けば 見るごとに 哭のみし泣かゆ そこ思ふに 心し痛し
たらちねの 母が形見と わが持てる 真澄鏡に 蜻蛉領巾 負ひ並め持ちて 馬買へわが背
(反歌) 馬買はば妹歩行ならむよしえやし 石は覆むとも 吾は二人行かむ 作者: 不詳 |
思草(ナンバンギセル) |
馬酔木(アシビ) |
あかね |
秋の七草 |
道の辺の尾花が下(もと)の思(おもひ)草 今さらになぞ物か念はむ 作者:不詳 万葉集第10巻 |
磯かげの見ゆる池水照るまでに 咲けるあしび(馬酔木)の散らまく惜しも 作者:甘南備伊香真人 万葉集第20巻 |
あかねさす紫野(むらさきの)行き標野(しめの)行き 野守は見ずや 君が袖振る 作者: 額田王 |
秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七種(ななくさ)の花 作者:山上憶良 万葉集第8巻 同じく秋の七草を詠んだ歌に「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 姫部志(をみなへし) また藤袴 朝貌の花」があります。 |
桜 |
萩 |
かほ花(コヒルガオ) |
朝顔(?) |
春雨に争ひかねてわが屋前(やど)のさくらの花は咲き初めにけり 作者: 不詳 |
我が屋戸の秋の萩咲く夕影に今も見てしか妹が姿を 作者:大伴田村大嬢 |
石橋の間間(まま)に生(お)ひたるかほ花の 花にしありけりありつつ見れば 作者: 不詳 万葉集第10巻 |
言(こと)に出でて 言はばゆゆしみ朝顔の 穂には咲き出ぬ 恋もするかも 作者: 不詳 万葉集第10巻 |
桃 |
堅香子(かたかご=カタクリ) |
すみれ |
なでしこ |
春の苑紅にほふ桃の花下 照る道に出で立つをとめ 作者: 大伴家持 万葉集第19巻 暮(ゆうべ)に、春の苑の桃李の花を眺矚(なが)めて作れる歌 |
もののふの八十をとめらがくみまがふ 寺井の上の堅香子の花 作者:大伴家持 万葉集第19巻 |
春の野にすみれ採みにと来し吾ぞ 野をなつかしみ一夜宿にける 作者: 山部宿禰赤人 万葉集第8巻 |
なでしこが 花見るごとに 少女(おとめ)らが 笑まひのにほひ 思ほゆるかも 作者: 大伴家持 万葉集第18巻 ここで乙女(少女)とは妻の坂上大嬢を指します。花を見るたび妻を思い出すといった歌です。 |