お土産土鈴 小西堂ももさだ工房 小西由紀子
第188回例会
2023(令和5年)4月21日にて
小西さんの地元・秋田県に所縁の土鈴です。
昔、田沢湖が田沢潟と呼ばれていた頃、辰子というとても美しい娘が住んでいました。辰子は自分の美しさがいつまでも続くようにと百日の観音堂願掛けをしました。 そこで聞いたお告げに従って山奥の泉の水を飲んだのですが、飲めば飲むほど喉が乾き、とうとう龍の姿になってしまいます。龍となった辰子は田沢潟に深く沈んで、主となりました。
そのころ、八郎潟には八郎太郎という龍が住んでいました。八郎太郎はもともとは鹿角市大湯あたりに生まれた優しくて力持ちの若者。 しかし辰子と同じように水を飲み続けて龍になってしまい、十和田湖を作ってそこの主となりました。 その後、様々な困難の末に八郎潟に移り住んで八郎潟の主となっていたのです。
田沢湖の辰子と八郎潟の八郎太郎はいつしか恋仲となり、冬になると八郎太郎が辰子のいる田沢湖に訪れるようになりました。 八郎太郎は冬の間辰子のもとで過ごし、春から秋は八郎潟で暮らします。
そのため八郎太郎と辰子の二龍神が暮らす田沢湖は、冬も凍ることなくますます深くなり、主の八郎太郎がいない八郎潟は冬に凍るようになったといわれています。
八郎太郎と辰子の土鈴は下半身が竜の二人が仲睦まじく寄り添っている姿です。二人が手にもっているのは大きなことで有名な秋田名物・秋田蕗。伝説では蕗の育つ季節には二人は離れて暮らしていたことになっていますが、もし一年中一緒にいたらこんな光景もあっただろうなと想像して作りました。
工房紹介
むかし百三段(ももさだ)と呼ばれていた雄物川河口近くの町・新屋(あらや)で作っている土鈴、土人形です。
素焼きに絵付けをした素朴なもので、絵付けには、顔料(鉱物などの色の粉)と膠(にかわ・動物の骨や皮を煮とかしたもの)を混ぜあわせた昔ながらの絵具を使っています。