先月ご紹介した土鈴の中には戦前の「暑中御伺候鈴交換会」の土鈴がありました。 それに比べて、参加者の数が圧倒的に少ないのは残念ですが、今月ご紹介しますのは現在の土鈴愛好家と作家が協力して作成した組土鈴です。

「マスマス土鈴を楽しみますの会」と名付けて、特徴として一合枡の中に入る土鈴を作りました。 枡も作品の一部として絵を描いて背景としたり、色々楽しんでいます。作品のテーマは「日本のおはなし」です。民話・小説・昔話・・・、色々なおはなしが出てきました。

昨年8月9月10月にご紹介した第1回箱入り娘の会に続く試みでした。


鮎と鯛とコチ

鮎と鯛とコチ

岐阜県美濃地方の民話がテーマとなっています。

昔、長良川の河口近くで鮎と鯛(黒鯛)がユッタリと泳いでおったやいな。

ある日、二匹は、「毎日、塩水ばっかやであいてまった。これから長良川を登って行って。うんまい水でも飲んでこまいか」ということになった。 二匹は長良川をどんどん、どんどんと登り、どうやらこうやら八幡の吉田川との出合いのとこまで来た。

そこで鮎が、「そうじゃが、白鳥の水はあじないで、おりゃあ、吉田川を登るわい」と言うと、こんどは鯛が、「おりゃあ、白鳥の水の方がうまいで、長良川を登る」と言い出した。

二匹はお互いに、「しゃあな、あじない水は飲めん」 「おりも、吉田川みたいなあじない水は飲みどうない!」 「しゃあなこと言わずに、せっかく、ここまでいっしよに来たんやで、連らって行かまいか」と意見がまとまらなんだ。

 そこへ海の方からコチ(カブ)が登って来て、「お前んた、何をそう言い合いしよおるよ?」と聞いた。

そこで鯛が、「よう聞いてくれた。実わな、水が・・・」と訳を話し、コチに仲裁を頼んだ。  するとコチは、「お前んた、鮎(相)と鯛(対)でないかい。コチ(こっち)は知らんわい」と言ってスルスルと川を登って行ったやいな

富士山笑呼 作

鹿男あおによし

鹿男あおによし


万城目学のファンタジー小説で2008年にはテレビドラマにもなったお話です。

教授の勧めに従って奈良の女子高に臨時教諭として赴任した主人公、慣れない土地と生徒との接し方に戸惑う日々。 そういった中、東大寺大仏殿裏の講堂跡で中年男の声でしゃべる雌鹿から突然話しかけられたことからストーリーが展開していく。

奈良の女子高校と奈良公園を舞台に鹿男となっていく主人公を取りまく女子高生、同僚教師、しゃべる鹿と謎の救国指令。


「奈良の人はマイ鹿を持っていて、買い物や通学は鹿に乗って行くんですよ。」と語る女子高生の様子を土鈴にしました。

土鈴背面のデザインはネタバレになるのでここでは説明しません。興味のある方は原作をお読みください。

フジワラヨウコ 作

相撲の始まり

相撲の始まり

相撲は埴輪(はにわ)の時代から始まっていた。

相撲は今から約一三〇〇年前の第十一代垂仁天皇の垂仁七年七月七日(紀元前二三年)に行われた野見宿禰VS當麻蹴速(蹶速)の一戦が起源といわれています。

當麻蹴速は大和の国當麻村(現在の奈良県葛城市)に住む勇士で蹴りの達人。 向かうところ敵なしとの噂を耳にした垂仁天皇が「誰か戦える者はいないか」と臣下に尋ねたところ、出雲の国の勇士・野見宿禰の名があがり、早速呼び出して試合をさせました。

この天覧相撲は壮絶な蹴りあいとなり野見宿禰が當麻蹴速の肋骨と腰骨を折って蹴り殺してしまいました。

野見宿禰は當麻蹴速の領地を与えられ朝廷に仕え、後に埴輪を発案し代々天皇の葬儀を司ったことでも知られる人物となりました。 又、後の菅原道真や毛利元就はこの野見宿禰の子孫と言われています。

きむらさちよ 作

リング(貞子)

貞子

鈴木光司によるミステリー・ホラー小説です。

見た者を1週間後に呪い殺す「呪いのビデオ」の恐怖と、その来歴に迫ろうとする主人公を描くお話。

土鈴にするにあたっては、映画化された時の印象的な井戸から、テレビから貞子の出現するシーンを切り取っています。 枡を井戸枠に、また、テレビに見立てて、そこから出現する貞子。

貞子は操り人形のように仕立て、そのぎこちない動きでホラー的な動きが感じられるようにしています。

海老天たまこ 作

今月は8つの組土鈴の内の4つをご紹介しました。残りの4つは来月ご紹介します。

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