今回は「土鈴と鈴口」について考えてみます。

まず、今更ながら、共通認識の為に「土鈴」を定義してみましょう。

これから述べる土鈴とは粘土を焼成して作られた土製のもので、中空の中に小さな玉(珠)を入れたもの。そして中空ではあるが、一部に小さな孔や切れ込みがあって音の響きを外にきかせる機能を持つものを言います。 孔や切れ込みは音を聞こえやすくする働きがありますが、焼成時に中の空気が膨張して破裂することを防ぐ働きもあります。

しかしながら孔や切れ込みがなく、振ると音のするものもあります。例えば、粒の粗い砂のまじった粘土で作ると、砂粒の間から空気が自然と抜け、破裂せずに焼成できることも実証されています。 このように密閉されたものは土鈴と区別して「ガラガラ」と呼びます。ただ、有名な土鈴で「英彦山ガラガラ」というのがありますが、これは鈴口が開いています。

また、卓鈴や風鈴、カウベルのように大きく開口されたものも土鈴とは区別されます。

そこで、上述のように土鈴に開けられた小さな孔や切れ込みを鈴口と呼びます。 孔と切れ込みを区別して、切れ込みだけを鈴口と呼ぶ考え方もありますが、ここでは孔も含めて鈴口と呼ぶことにします。

我が国の土鈴は、既に縄文時代に存在していたことが考古学の成果によって実証されているのをみても、そのルーツはかなり古いものです。東日本にみられる縄文時代(中期から後期)の出土品には、球形・楕円形・円筒形・土偶形などの土鈴が数多く発見されており、西日本では、縄文時代だけではなく、弥生時代の土鈴もいくつか発見されています。 しかも、縄文時代の土鈴が小さな丸い鈴口のものと、切れ込みの鈴口のあるものとに二分されているのに対して、弥生時代の土鈴のほとんどに切れ込みが入っている点に、音の工夫に対する時代的変遷がうかがわれて、興味深いものです。

ただ、全ての土鈴の鈴口が孔から切れ込みに変わったかといえば、そうではなく、現在でもデザイン的な制約等により小さな丸い鈴口しか開いていない土鈴もあることを申し添えます。


小さな孔が開いた猫鈴

6226_猫_上野美子

小さな孔が開いた猫鈴です。

高さ約37㎜。小さな手びねり土鈴です。

上野美子さん作

ひょっとこ鈴

5430_ひょっとこ

底に長方形の鈴口が開いています。

高さ約43㎜。形が丸く、鈴口も大きく開いているので良い音が鳴ります。

備中張り子倶楽部作

小幡人形 申鈴

5977_申_小幡人形

底にきれいな鈴口が開いています。

鈴口の両端が丸くなっています。この形はストローのようなポンスを用いて丸い孔を二つ開けて、その間をカッター等で切り込むことによって作ることが出来ます。

小幡人形 九代目 細居源悟さん作

両面仁王鈴

5375_高橋毅孖_仁王

鈴口が側面まで回り込んでいます。

また、これも鈴口の両端が丸くなっています。

高橋毅孖さん作

微笑み猫土鈴

6220_微笑み猫_井上_タンタナクイ

タンタナクイ(tantanakuy)さんの微笑み猫土鈴です。これも鈴口が側面まで回り込んでいますが開口部の幅に比べて両端の丸い孔を大きく開けています。

タンタナクイさんはオカリナ等の楽器も作られているので、音にこだわって良い音色です。

形状が球形に近いので中で鈴玉(珠)が気持ちよく転がります。

掌の上でコロコロ鳴らしても良いですが、猫の耳を持って振ると高くて澄んだ音が聞こえます。

タンタナクイ 井上さん作

獅子頭土鈴

1320_獅子頭_廣田神社

獅子頭の口が鈴口になっています。

獅子頭の土鈴にはこのように口が鈴口になっているのも多く見られます。

廣田神社授与

ハート雛土鈴

3839_ハート雛・大

底がハート型になっていて、その周囲に鈴口が開けられています。

このような変形の鈴口もあります。

海老天たまこ作

ヘッダーとフッターにも鈴口の写真をあげています。

ヘッダー左側は深大寺窯・馬場信子作の紅梅白梅鈴、右側は山本芳考作の不退寺多宝塔鈴。 フッターは共に戦前の土鈴で左側は興福寺の華原馨(かげんけい)太鼓鈴、右側は吉備津神社狛犬鈴です。

このように鈴口にも色々ありますのでお手持ちの土鈴も一度見直してみませんか。

 

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